とある大学に博物館関連講義のゲストティチャーとして伺った時のこと。

講義終了後にいただいた感想にこんなものが。

5

「(私が)とても優しい方で、学芸員のイメージが変わりました。」

にじみ出ちゃいましたかね、優しさがヾ(´ω`=´ω`)ノ

いや、違う、そこじゃない。

「学芸員」のイメージどんなだったんだ!


ビビりながら読み進めると、「学芸員」の多くが「研究者」というイメージで話しづらいとのこと。

大学感想2

うーん、確かに硬~い人もいます。

でも大方は「シャイ」なんだ、と思いたい。

私も一見、真面目そうに見えるらしいので、誤解されているのではないかと心配になることもあります(中身は「どこかネジゆるんでるんじゃないの」と言われたぐらい昔から...(/ω\))

ナウシカ2300
小学生の頃の愛読書をひっぱってきました。特定のジェネレーションにしか分からないネタですみません(「風の谷のナウシカ1」徳間書店の付録のポスター)。


日本の博物館業界内では、「学芸員」ではなく「芸員」だとよく言われるように、一般に浸透しているイメージと違い、専門の研究ばかりしていられる博物館はむしろ少ないです。
(ちなみに、欧米の博物館では分業が進んでいて、標本資料の保管、調査や研究、展示、教育普及、広報などそれぞれに専門家がいます。それについてはこちらの記事もご覧ください)

その証拠(?)に、地方博物館で働いていた時は、電球交換や展示パネルを直すために、いつも脚立をかついで廊下を歩いていたので、事務系の職員から「ショムニ」と呼ばれていました(これももう若い人には通じないかのぅ)。

ショムニ
お尻を向けてすみませんm(__)m

もちろん、どの博物館も仕事量に対して人員が少なすぎるのは大きな課題なのですが、個人的には雑芸と呼ばれるような自分の研究以外の仕事も嫌いではなかったです(トイレの電球交換は誰かがしてくれた方が嬉しいけれど(-_-;))。

雑芸員の仕事は果てしなく終わらない山のようでしたが、
冬の浜辺に相撲取りのように重いウミガメの死骸を引き取りに行くのも、
クジラの解剖の手伝いをして壮絶な臭いを白衣につけてしまい捨てるはめになったことも、
冷える収蔵庫で化石標本とデータのチェックをすることも、
夜中まで展示室で展示ケースに工作することも、
解説パネルをカッターで切って貼るのも、
勢いあまって自分の指を切って絆創膏を貼るのも、
ボランティアさんと一緒に観察会の下見に行くのも、
大学からの実習生に業務について教えるのも、
小学校に行って理科の授業をするのも、
子どもたちの夏休みの宿題相談にのるのも、
逆に地域の人から話を聞いて情報をいただくのも、
ホームページでイベント情報を更新するのも、
展示リニューアルのチラシを配布して歩くのも、
テレビの前で特別展の宣伝をするのも、
色々な仕事は繫がっていて、だからこそ生まれるアイデアやできることもありました。

そして、来館者や利用者の人たちが喜んでくれる姿を直接見ることができたし、とにかくいい博物館を作れるならどんなことでも、という感じでした。

「学芸員はがん」とまで大臣に言われてしまっていますが、出会った多くの学芸員も、少ない人数と予算で雑芸をこなしながらも、いい博物館を目指して日々奮闘していました。

全国で歴史系、美術系、自然科学系など全部合わせても数千人と、あまりにレアなポストのため、日々どんな仕事をしてるのかさっぱりわからない職業No.1の学芸員ですが、脚立をお供に、現在だけでなく、未来の社会にも貢献する仕事であることは確かです。


今は大学で、学芸員を目指す学生に対して、リアルな仕事とともに「良い研究者ではあってほしいけれど、偉そうであってはほしくない」と、偉そうに伝えています( ̄▽ ̄;)

当たり前ですが、博物館は学芸員の奮闘だけでなく、たくさんの人に支えられて成り立っているのですから。


話しかけづらいかもしれませんが、学芸員はそんなに怖くないですので、試してみてはいかがでしょうか。

クシャナ2300
クシャナ殿下万歳! 特定のジェネレーションにしか分からないネタでもうほんとうに...(「風の谷のナウシカ1」徳間書店の付録のポスター)