3年前から「科学へジャンプ」というイベントの講師をしています。

科学へジャンプHP
科学へジャンプホームページより)

障害を持つ子どもたちは「体験する」という経験が乏しくなりがち。

そのため「視覚障害を持つ生徒・児童が科学に触れるチャンスを作る」という趣旨で、2008年から全国的に行われています。

最近は、学校教員だけでなく博物館関係者も多く参加されていて、今年度の関東のイベントだけでも「神奈川県立生命の星・地球博物館」、「群馬県立自然史博物館」、「三重県総合博物館」、「葛西臨海水族園」、「沖縄美ら海水族館」の方がいらしていました。


私は時々、化石ではなく「木の実」のワークショップもやっています(化石のワークショップはこちらの記事もぜひ)。

化石よりも身近なもののため、「な~んだ」と最初から興味を失わせないように、今回はワークショップ名を「あなたの知らないドングリの世界」としてみました。

どんぐりの世界タイトル

見返すと、なんだかひと昔前に流行った心霊番組のタイトルのようです...(/ω\)


それはさておき、なぜ化石屋が木の実屋になっているかというと...。

古生物(化石)は生物なので、今生きている生物にもおおいに興味があります。

サメ徐肉
(アオザメを解剖して骨格標本を作っているところ)

しかしながら、植物だけは見分けるのが難しく、なかなかとっつきにくい。

そんなわけで、植物は何気にスルーしていたのですが、博物館の仕事で「木の実」を担当することに。

そうしたら、ドングリや松ぼっくりなど、その形態のラブリーさと多様性にあっという間にフォーリンラブ♡

山でも街でも、石だけでなく木の実を探すという、下しか見ない習性に拍車がかかりました( ;∀;)

セントラルパーク(テキスト入り)
(紅葉の美しい、ニューヨークのセントラルパークに行っても、つい下を向いて木の実を探してしまいます)

家には化石だけでなく木の実も転がることになり、全く収集つきません(-_-メ)


さてこのような致命的運命的な出会いをはたした「ドングリ」ですが、実際に体験をすると、子どもから大人まで吸引してしまう、という恐ろしい魔力を持っていることに気が付きました。

「ドングリ~?、そこらへんにあって珍しくもないし、子どもっぽいからそんなに興味なーい」という方も多いと思うのですが、家族について来ただけのワークショップの参加者から、私が勝手に助手に任命して教材収集に拉致された人まで、その多様性について説明し体験してもらうと、バッタバッタと木の実フェチになっていったことからも明らかです。


でも、視覚に障害を持つ子どもたちは?

自分で拾うことは難しくても、この魔力に憑りつかせたい!!(やっぱり心霊だ!)

そんなわけで、触っただけでドングリの種類が見分けられるようになるワークショップをしています。

「えっ、ドングリっていう木があるのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、日本だけでも十種類以上あるんです。

子どもたちの身近にありそうなドングリを使い、自分だけのドングリ図鑑を作ります。

触ってわかるドングリ図鑑


小さくてわかりにくい部分は、凸凹のある手作り紙模型などで説明します。
ドングリ紙模型(テキスト入り)
(ハチのお尻ではない)

いくつかのドングリを渡して、触っただけで名前を当てる最終試験をパスすると、「どんぐり博士」認定証がもらえます。
どんぐり博士認定証

触ってじっくり観察することで、「このドングリ大きい!」、「これは(葉っぱの)ギザギザが引っかかる!」とそれぞれの違いを自分で見つけて、声に出すようになります。

また、自分専用の図鑑を作ることで、人に頼らず自ら調べられるようになるので、「この図鑑いいね!」と嬉しそうにしています。

このワークショップ、見学された特別支援学校の先生にも大好評ですヽ(^o^)丿


他の人が拾ったどんぐりでも、触っただけで見分けることができ、それをきっかけに障害を持っていない人とも一緒に活動できるようになる一歩になればと思っています(大人でも見分けられる人は少ないので)

そして、身近なドングリから、私のように植物や自然に興味を持つようになってくれたらなぁと思っています。


さぁみなさんも、身近な題材から科学へジャ~ンプ!


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

ちなみに、「木の実拾い」はかなりの確率でコミュニケーションを生みます。

散歩途中のおばさまから、海外の学会まで、拾っていると「何しているの?」と声をかけられて、仲良くなれます(化石の場合は、人里離れているので声をかけてくれる人がいない...)

ある時、遊歩道で一人ドングリを探している怪しいアラフォーに、「何しているの?」と声をかけて来た、小学生の姉妹二人。

少し離れたところにいるお母さんと帰る途中のようだったので、あんまり引き留めてもいかんと思い「ドングリだよ」と簡単にしか答えなかった。

そしたら、なんと彼らも拾い出した。

近所でドングリが不作の年だったため、教材不足でライバルだ!(笑)などと大人げなく思っていたら、近づいてきて拾ったものを「あげる」と手渡された。

お母さんに呼ばれて、ぽかんとしている私を残して二人はあっという間に走り去っていった。

どんぐりをくれた二人(テキスト入り)

手伝ってくれたんだ...(/ω\)