府中市美術館で「動物の絵 日本とヨーロッパ」という企画展を見てきました(2021年11月28日まで)。
美術館外観
まだまだきれいな博物館の外観。

府中市美術館は、「与謝蕪村 『ぎこちない』を芸術にした画家」(2019年)、「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」(2021年)など、そのチラシとキャッチコピーを見ると、正直脱力するというか、いい感じに斜めどこかへ攻めている企画が気になっていてずっと行きたいと思っていました。


展示の最初には、伊藤 若冲(じゃくちゅう)(1716-1800年)の作品がドーンと。
「象と鯨図屏風」。このツイッターにあるように、行く前に画面上で小さく見ていた時は、生物学的に少し妙な感じがして特に興味はなかったのですが、本物を見たら、「しんとした静寂」という感じですんばらしかった(この作品の展示は2021年10月24日まで)。

広々とした展示スペースと背景の薄紫、控え目ながらも美しいライティングと空間全部がサイコーで、ずっとここでたたずんでいたかったです。
大学で「博物館展示論」を教える際、現場経験のない学生には言葉だけでは中々伝わらないので、このような実際の動画をよく探しているのですが、「準備段階」って地味に面白いことが詰まっていますよね。

展示の裏側に興味のある方は、「動物・ふつうの系譜展@府中市美術館【図録制作チーム公式】」のツイッターをのぞいてみるといいかもしれません。


この作品のように、前期(10月24日まで)・後期(11月28日まで)で見られる作品がかなり入れ替わるのですが、結構「個人蔵」の作品が多くて、借用したり調整が大変だろうなと勝手に想像。
2回目以降半額になるチケット
そんなわけで、同じ企画展でも2回目以降は半額で見られるそうな。


他に個人的に好きだったものをご紹介。
「秋叢戯虫(しゅうそうぎちゅう)」 小寺 稲泉(とうせん)(1882-1945年)作。

「叢」って何だと思ったら、「くさむら」とのこと。

秋の草むらをのぞいてみたら、って感じなんでしょうか。

カエルなんかもいて、「何を運んでいるのかな~」と見入ってしまいます。

お伽噺的な世界なのですが、小さな世界への眼差しにめちゃくちゃ心ほぐれます。


お次は、切手の図柄にも採用されたりして、時々見かける、鍬形 蕙斎(くわがた けいさい)(1764-1824年)の「鳥獣略式図」。
令和のイラスト、と言われても全く違和感ない永遠の「ゆるカワ」。

遊びで書いたということだったのですが、上手い人が書いたのはどれもこれもかわいい。

中でも右の写真の一番右上にある、「エイ」が最高潮にかわいいので、ぜひ。


海の生きものとしては、お釈迦様が亡くなった時を描く「涅槃図(ねはんず)」で、人間だけでなく、動物も悲しんでいるという作品もお勧め。
「八相涅槃図」。左下のクジラがお供えというかに花ではなく紅い「サンゴ」をくわえているのがなんか胸熱。


「日本とヨーロッパ」という副題があるのですが、ヨーロッパの(個人的)一押しはコチラ↓
看板で紹介されているシュモクザメの絵
「シュモクザメ」。美術館なんだけど、かなりマイナーな動物の絵まで扱っていて、自然史屋としては嬉しい限りです。

スイスの博物学者ヨハン・ヤーコブ・ショイヒツァー(1672-1733年)が、聖書の記述をリアルの自然とあわせて銅版画で図示したもののひとつ(神聖自然学)。

聖書の中の「海の竜」は「シュモクザメ」であるという解釈。

その解釈はさておきにしても、シュモクザメって「何でこんな生き物がいるんだろう」と思わずにはおれない、自然のワンダーを感じさせてくれる生物なのですが、描かれ方がシュールでさらに釘付け。

古生物(化石)に関する著作もある方なので、自然史好きは見落とさぬよう、の一品です。


盛り上がってくる終盤には「徳川 家光」の作品。
ミミズク(左)とウサギ(右)。

右の絵は「カイコ」か「ヤママユ」にしか見えん!
カイコの顔
羊毛フェルトでつくられたカイコ(市山美季氏作・伊丹市昆虫館の展示)。蛾(ガ)というと嫌われがちですが、お顔はすっごくかわいいので、私はラブ!


いやそこじゃなくって、見知らぬ観覧者と目を合わせて笑ってしまうくらい、計らずしも力の抜けるこの作風。

こちらも、誰も真似のできない完成された間が抜けた感↓
葵の御紋も入った立派な掛け軸のすみっこにチャボ。

なんでかよくわからない魅力というものがこの世にはある、ということだけはよくわかりました。

ショップではこの家光の絵が描かれたお買い物バックまで作られていて、(お買い物バックはあるのに)あやうく買ってしまいそうになるという恐ろしい作品です。
これを作ることにゴーサインを出したということが、ステキだと思う。


鳳(おおとり)はやはり、円山 応挙(おうきょ)(1733-1995)らによるワンコづくし。
子犬の描かれた看板とともに写真撮影
こんなビジュアルがポスターやチラシに使われていたら、そりゃ行ってしまうでしょう(下の長澤 蘆雪(ろせつ)(1754-1799年)のワンコは10月26日から展示)。

意外なところで、俳人 小林一 茶が句とともに描いたものもあったりします。

そして、これらのワンコに対する企画展HPの「かわいい」の表現色々がかなりうけるので、ぜひ見てみてください。


最後は自分でスタンプを押して作るメッセージカードを作ってお持ち帰り。
かわいい動物のスタンプを押して作るメッセージカード
いや~癒されました。


館へは電車とバスでアプローチになります。

府中市美術館の地図。

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私が求めていたのはこれですよ、これ!
自分で自分の写真が撮れるように三脚が置いてある
「ゆるジオ」を読んでくれていたのか?という感じの三脚の充実ぶり(これに関してはこちらの記事をぜひ)。

スマホだろうが、普通のカメラだろうが、タイマーで自撮りができます。

そう、ボッチ来館だって、記念に写真が撮りたいんや!

写真だと台が点字ブロックと近すぎて危ない感じもしますが、私が写真を撮るのに興奮して、ハンカチを落としたのにも気がつかずにいたら、この側におられる受付の方がマッハで拾って渡してくれたので、点字ブロックを利用する方が来館された際には、マッハでサポートしてくれるのだと信じています。