化石屋なんですが、「好きな博物館は?」と聞かれると、「伊丹市昆虫館」(兵庫県)を挙げてしまう。

なぜなら、展示に「愛」と「ユーモア」を感じるから╰(*´︶`*)╯♡


例えば、トイレの前にある「むしのうんこ」の展示。
むしのうんこの展示
ミニ便器に思わず大人も子どもも立ちどまる。

フタを開けるともちろん...
むしのうんこの展示でフタを開けたところ
このうんこのなさりぬし(笑)は「ヤママユ」の幼虫。

薄緑色で小さなコーヒー豆のような形に意外と親しみを感じます(うんこだけど)。

10年ぐらい前に訪れた時は、「虫のうんこ」で染めたストールなんかも展示してあって、あまりにも自由に攻めている教育普及活動にたまげたもんです。

うんこ染め
結構きれいな色(エメラルドグリーンなど)に染まります。


また、階段の脇の壁に貼られた「昆虫の顔面」のポスターでは、昆虫の見方がちょっと変わります。

オオムラサキの幼虫の顔面
日本の国蝶「オオムラサキ」は、幼虫の時からなんとなく気品あふれている。

キイロモモブトハバチの幼虫の顔面
キイロモモブトハバチの幼虫はラブリーな中にも、スターウォーズのヨーダのような何でも知っていそうな雰囲気が。

タガメの顔面
ラスボス感あるタガメの成虫は、キリッっとね。


休憩だってイモムシの上でできてしまいます。

イモムシベンチ
だいぶいい大人になりましたが、正直、乗って撮ってみなさんに自慢したかったです。


以前の展示になりますが、ドイツ箱(昆虫標本を保管する長方形の箱)の1つに1テーマを取り上げた展示がありました。

ナミテントウの展示
「ナミテントウ」のキャッチコピーは「パターンぞくぞく!ナミじゃない」。

よく見かけていたテントウムシの模様が多様だということをこの展示で初めて知りました。


こちらも、一発で特徴がわかる紹介。

オオキンカメムシの展示
「くっさいトラベラー!?」...130キロも移動する「オオキンカメムシ」、もう忘れません。


そしてこちらは、映画「羊たちの沈黙」で俳優ジョディ・フォスターと共演した「メンガタスズメ」とのこと。

メンガタスズメの展示
解説クイズの脱力さに負けました...。


羊たちの沈黙」のDVDなどのイメージにも登場。

30箱以上あったのですが、映画やスポーツなど、色々な人が興味を持てるような切り口から、個性あふれすぎる解説とカラフルなデザインで、特に昆虫が好きでなくても一つ一つのぞいてみたくなるほどひきつけられるものでした。

新作をまたやってくれないかな~。


そして今は、「紙切り虫のしわざ」というプチ企画展をやっていました。

紙切り虫のしわざタイトル
切り絵作家のいわたまいこ氏の作品展なのですが、チョー細かい細工。

プラタナスグンバイの切り絵と説明パネル
「プラタナスグンバイ」という3㎜ぐらいの小さな虫だって、切り絵の柄を見れば生物の超絶技巧(?)におののかずにはおれません。

「昆虫館」というと子ども向けのイメージが強いのですが、見学していた70代ぐらいの男性と50代ぐらいの女性が、しきりに「すごいねぇ」と言いながら、実物の昆虫標本と見較べていました。

オオゴマダラの紙細工
昆虫って、意外とメルヘンワールドとマッチしますな。

ちなみにオオゴマダラのサナギはマジで金ピカのため、「なんでこんな色なの???」と激しく動揺すること間違いなしなので、ぜひ実物の展示も見てください。

オオゴマダラのさなぎ
オオゴマダラの成虫(チョウ)は金色じゃないのに(一つ上の写真の切り絵)、抜け殻(写真右)は透明。「なんでやねーん」とますます興味をそそります。

この切り絵の企画展示は2019年3月25日(月)までです。


ちなみに、誰も間違わないかもしれませんが、伊丹市は大阪府ではなく兵庫県です(「伊丹空港」のせいでずっと勘違いしていたのは私だけだろうか...)。

伊丹市昆虫館外観



リピーターと思われるご家族が、温室が開くのをまだかまだかと待っていたり、

温室では、間近に見られる鮮やかな花やチョウに
大人も子どもも思わずにこにこし

体験室ではお父さんが子どもに昆虫紙芝居をして、子どもがかぶりつきで聞いているなど、

外の寒さや世界を忘れてなんだか極楽にいるみたい。


お父さんが紙芝居をしている様子


そんな来館者の幸せそうな様子を遠目で見ていると、胸の痛みとともに必ず思い出すこと。

自然史博物館で働いていた時、昆虫が好きな小学生の男の子がよく遊びに来ていました。

彼は学芸員とおしゃべりしたり、作業を見学したり、邪魔をしたりして(笑)、放課後や休日の時間を博物館で元気に過ごしていました。

ただ、彼の家族は特に自然に興味があるわけではないそうで、見かけたことはありませんでした。

野外観察会に行きたいけど、小学生は保護者同伴の行事だったため、連れていってくれる人がいないとつぶやく彼に、どうしたらいいかみんなで悩んだりしたこともありました(その時は色々ありながらも行けることに)。

そんなこんなで数年過ごしたある日、突然「中学生になったら勉強しないといけないからもう博物館に行くな、と家族に言われている」と寂しそうに言い、その後、ぱったりと博物館に姿を見せなくなりました(/ω\)


「昆虫」や「化石」の分野でよく見る光景なのですが、小学校低学年ぐらいまでは周囲も子どもたちの自然に対する興味を褒めたり応援したりするのですが、小学校高学年ぐらいから「そんなことしていないで、学校の勉強をしなさい」となってしまうことがあります。

自然から学ぶことと、テストの点数の価値が逆転してしまう。

本人の興味が違うところに移ったのならしょうがないけれど、周囲から「そんなこと」とか「カッコ悪い」と思われて離れてしまうのは残念。

それぞれの状況に関係なく、大人になるまで自然との付き合いを分断されないようにするにはどうしたらいいのか、昆虫が好きだった彼のことを思いながらずっとずっと考えています。


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昆虫館入ってすぐに、アメリカの大リーグで活躍中の田中将大選手のサインが展示されていた。

田中将大選手のサイン(樹名板)
小学校5年生の時に昆虫館のある昆陽(こや)池公園の「ヤマボウシ」につけた樹名板。

「現存する田中選手のサインとしては最も古い物と推測されます。」という説明文に吹きました。