4月2日は「世界自閉症啓発デー」(←2019年のポスターは「セサミストリート」のキャラクターを使っていてキュートなのでホームページをのぞいてみてください)。


「自閉症」という言葉は、ニュースなどでもよく聞くようにはなったものの、パッと見ではわかりにくい障害のため、どうやって配慮したらいいのか戸惑うこともあるかと思います。

今回は、自閉症の人の「苦手なこと」のひとつ、「音」について。


一般の人でも大きな音が苦手な方はいるかと思いますが、「聴覚過敏」と言って「うるさいな~」ではすまされないほど特定の音に苦痛を感じる方がいます。

そのため、イヤーマフ(ヘッドホンのような形だけど、音楽を聴くのではなく防音する)をされている方もいます。


イヤーマフのイメージ画像。


また、そこまで騒音がない場所などでも、録音したりすると、エアコンの機械音や他の人の話し声など意外と色々な音に囲まれていることに気がついたことはないでしょうか。

「自分と話している人の声」など、自分の聞きたいものだけにフォーカスして暮らすことができる大多数の人にとっては、このような周囲の音は日常的にはほとんど気にならないかと思います。

日常生活にはたくさんの音があるイメージ

でも、自閉症の方の中にはそれができないために、たくさんの音に囲まれた場所では耐えきれなくなり大声を上げるなどパニックになってしまうことがあります。


博物館は、視覚で物事をとらえるのが得意な自閉症の方にとって魅力的なことは間違いないのですが、多くの来館者がいるので、どうしてもたくさんの音があふれてしまうため、ハードルが高くもあります。

そんなわけで、海外の博物館では定期的に早めに開館する日を作り、自閉症の方向けの時間にしているところがあります。

泣く子も黙る(?)世界の博物館の大御所、「ロンドン自然史博物館(Natural History Museum, London)」も、自閉症の方とその兄弟、家族のための早朝開館を2か月に1回ほど行っています。

この日は一般入場が10時からのところ、8時からオープンするとともに、パニックになってしまった時、彼らが落ち着くことができる、より静かな「センサリールーム」も準備されています。

ロンドン自然史博物館内観
「インクルージョン」もそうですが、英語をそのままカタカナ語として使っている用語が多いため、なんだかひと昔もふた昔も前の歌みたいに和洋折衷な日本語になりがちな説明ですが、「センサリーフレンドリー(Sensory Friendly)」は、音や光などの感覚刺激に配慮しているということです。

関係ないですが、この写真に写っている、館のシンボル的な恐竜「ディプロドクス」の標本は2020年3月まで全英ツアーのため館を不在にしています(全英ツアーってコンサートみたいですな...)。


他にも、世界一保存が良いと言われるティラノサウルスの骨格標本が有名なアメリカの「フィールド自然史博物館(Field Museum of Natural History)」(シカゴ)も月1回、土曜日の9時から10時に開催しています(詳しくはこちら)。

また、自然史博物館だけでなく、歴史博物館(例えばイギリスのNational Civil War Centre)、動物園(例えばミネソタ州のComo Park Zoo & Conservatory)、水族館(例えばボストンの New England Aquarium)、科学館(例えばロンドンのScience museum)など様々な館でも行われています。


このような例をご紹介する際、誤解のないようにしないといけないのは、ただ単に「○○のために」と場を分離してしまうのがよいというわけではありません。

例えば、子どもやベビーカー、車イス利用者など目線が違う方がゆっくり見られるように、特定の方だけを招待するというイベントがあります。

日常生活で障害者等に出会う機会が少なく、配慮することに慣れていない人が多い現在の日本においては必要ではあるのですが、将来的には誰がいつ行っても展示物が見えるように自然にゆずりあえる社会を目指す方がいい。

ただ、今回話題にしている自閉症など、特性として「人混み」が難しい場合には、落ち着いて見学できる時間や場を作ることは必要です。

そして、このような特別な日だけでなく、館内で音や光などの刺激が多い場所を示したマップ(センサリーフレンドリーマップ)をホームページなどで公開することで、事前に心の準備ができたり、その場所を避けることができるため、日常的にも利用できるようになる、という方法もあります(例えば、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館のセンサリーフレンドリーマップはこちら)。


社会の中で多様な人が一緒に暮らすにはどうしたらいいか、様々な人がそれぞれの場で悩んだり実践したりしていると思います。

そのような中で、ただ「平等」なのではなく、誰もが参加したり楽しめる「公平」になるような、柔軟な社会を大好きな博物館が率先して見せられれば最高じゃん!(←古い)と思ってこんな話を講演したり講義したりしています、ハイ...。


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この聴覚などの感覚過敏を含めた「自閉症」についてもっと知りたいなという方には、「光とともに」というマンガがおすすめ。



マンガと侮ることなかれ、専門家やご家族に取材してあって、とてもしっかりした内容です。

自閉症を解説した本は山のようにあるのですが、家族や学校の先生、近所の人など、どこにでもいそうな周囲の人の気持ちも物語として丁寧に描かれているため、自閉症の特性を他人事の知識として理解するのではなく、否応なしに自分の日常生活を振り返って考えてしまうところが、「マンガおそるべし」(私自身、ギャン泣きして止まらないお子さんに「親御さんどうにかしないのかな〜」と何も知らずに思っていたのはそんなに遠い昔のことではありません)。

「この時はこうする」というようなマニュアル的な対応ではなく、「自分はマンガの中にでてきた〇〇さんのような、うわべだけの対応しちゃってたなあ」とか、一番ベースとなる、相手とどんな関係を築きたいのかということから自分の対応を考えるようになるので、博物館のスタッフや学芸員を目指す学生の手始めにはこれをおすすめしています。

ついでに言うと「ザ・少女マンガ」なので、お勉強感なくグイグイ読めちゃいます。

というわけで、特に興味がなさそうな方にも、目につくところにそっと置いたりして、マンガだと思って食いつく手に取るのを待つなど、地道な普及にも使えます(←やった)。

少し古い本ですが、自治体や大学の図書館などに所蔵されていたりもするので、ぜひお手に取ってみてください!